イントロダクション - シリーズ安全な画像処理
写真や映像の中に、個人情報などの外部へ公開してはならない情報が含まれていた場合には、一般的に情報保護のため、モザイクやぼかし、塗りつぶしなどの処理を行い、その情報が見えないようにします。元の画像 |
塗りつぶし |
モザイク処理 |
ぼかし処理 |
しかし、それらの処理を行うときには、いくつかの注意点があります。
基本的に、人間基準で、見た目的に認識できないかどうかで判断してはいけません。
いまや、コンピュータを使用した解析により、相当数の計算を行える時代です。計算の仕方によっては、元々の情報を復元できてしまう可能性があります。
今回は、塗りつぶすことで情報を見えなくする方法について、考えてみます。
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情報保護のためのぼかしは安全か? - シリーズ安全な画像処理
絶対にやってはならない、情報保護のための、モザイク処理の方法 - シリーズ安全な画像処理
情報保護のための塗りつぶし処理として、絶対にやってはならない方法
不透明度が 100% ではない塗りつぶし処理
これは、絶対にやってはならないことです。デジタルの場合
画像の塗りつぶしに使用する画像編集ソフトウェアによっては、塗りつぶしの不透明度を設定できるものがあります。不透明度が100%(完全に不透明)ではなく、少しでも塗りつぶした色が半透明に張ってしまっている場合には、塗りつぶしを行って隠したかった情報が、比較低簡単に復元できてしまうことがあります。
不透明度 80% で塗りつぶした情報 当然、塗りつぶした情報が透けてみえている |
画像編集ソフトウェアによっては、前回使用した塗りつぶしの不透明度を記録している場合があります。
そのため、情報保護のための塗りつぶしを行うときには、その設定を確認してから、塗りつぶしを行う必要があります。
不透明度 99% で塗りつぶした情報 あなたはこの画像から、塗りつぶした箇所のテキストを 復元することはできますか? ヒント: (1) 画像編集ソフトのレベル補正を使ってみよう! (2) 視野角の狭い液晶パネルで、上からのぞいてみよう! もしかしたら、液晶パネルの色表現能力・設定によっては、 既に塗りつぶし部分の文字が見えているかもしれません。 |
アナログの場合
コンピュータがそれほど一般に普及しておらず、紙の書類が全盛だったころには、黒マジックなどで書類内の情報の一部を塗りつぶすことで、その情報を見えなくする方法がとられることがありました。しかし、その方法はもう現代では無効であり、その方法で情報の保護を行ってはなりません。
コンピュータで色情報を扱う場合には、一般的に色を{赤(R), 緑(G), 青(B)}の三原色に分解して、それぞれの色の濃淡を 1バイト(8bit : 256段階) で管理しています。
色の濃淡(グレースケール):1バイト(8bit : 256段階)
0
32
64
96
128
160
192
224
255
そのため、色のパターンとして、赤:256パターン × 青:256パターン × 緑:256パターン の計 16777216 パターンで管理します。
場合によっては、それ以上のパターン数で管理する場合もあります。
以下では、赤、青、緑の3原色で構成された色の濃淡をRGB=(赤の濃さ, 緑の濃さ, 青のこさ)という形式で表現します。
さて、人の目で見た時に、RGB=(0,0,0) の情報と、RGB=(1,0,0)の違いは見て取れるでしょうか?
試しに、ここにRGB=(0,0,0) の情報と、RGB=(1,0,0) の情報を並べてみます。
RGB=(0,0,0) の背景色
RGB=(1,0,0) の背景色
文字色は白(RGB=(255, 255, 255))です。
背景色をそれぞれ、RGB=(0,0,0) と RGB=(1,0,0) にしています。
さて、その色の違いは認識できるでしょうか?
少なくとも、私には同じ色にしか見えません。
そのような不完全な塗りつぶしが行われた情報を、スキャナやビデオカメラ、デジタルカメラなどでパソコンに取り込むと、人間には認識できない色の階調が表現されている可能性があります。
そのような、人間には認識できない色の階調が表現されていた場合、そのまま人間が認識することは不可能ですが、その画像に対して画像処理を行うことで、そのわずかな色の階調を強調することができるため、人間の目でも識別可能にすることができます。
今回は、黒マジックで元の情報を塗りつぶしたケースについて主に説明しましたが、他にも、両面印刷の書類をスキャナでスキャンした場合には、見た目上裏面の情報が見えていなくても、画像データ内に微量の数値として残っている場合がある可能性があります。
対策
不透明度が 100% ではない塗りつぶし処理に対する対策
不透明度が設定できない塗りつぶし処理や、不透明度が設定できない塗りつぶし処理しか行えない画像編集ソフトを使用します。まとめ
コンピュータの内部では、画像データの色合いの微妙な差が、デジタルデータとして記録されています。そして、コンピュータのテクノロジーは、人間がそのまま見ただけでは分からない・理解できないことを、人間が理解できる形へと変換できる力があります。
不特定多数へ画像・映像情報を発信する場合には、このような点に気を付ける必要があります。
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